ガラクタ♂♀狂想曲
「——デンちゃん。山下、瑠」
「まじ!?」
話し終えるよりも先にそう言ってガバリと勢いよく身を起こしたデンちゃんは、慌てて私の手から携帯をもぎ取った。
「もしもし瑠美?」
やっぱりルミちゃんか。
そうか、そうか。
やっと窮屈だった腕枕から解放された私は、そのままベッドへ横になる。
するとデンちゃんの綺麗な背中が目の前にあった。
「わかった。いまから行くから」
目を閉じる。
私には隠すつもりもないのか、声を落とさずその場で喋るデンちゃん。
だけど考えてみれば、それもそのはずで。さっきまで相談受けていたぐらいだし。
"山下瑠美"
目を瞑っているのにもかかわらず、まるで脳裏に焼き付いたかのように、その文字が浮かんでは消える。
ルミちゃん。
デンちゃんがさっさと電話に出ないから、話の中にしか存在しなかったルミちゃんに苗字がついてしまったじゃない。
しかも漢字つきだし。妙にリアルなんですけれど。