ガラクタ♂♀狂想曲
「ただいまあ」
大きい袋をガサゴソと鳴らしながら部屋へ上がってきたデンちゃんは、それを脇に置いたあとブルッと一回大きく震え、寒いといいながらマフラーに顔を埋めた。なんら様子は変わらない。
「おかえり。ドンキで何を買って来たの?」
「あー、これ? なんか今度、店で仮装みたいなのやるらしくて、いろいろ見てきた」
「ふーん」
ドンキも瑠美と一緒だったのだろうか。
マフラーやコートを脱ぎ、それをきちんとハンガーに掛けていくデンちゃんを眺めつつ、そんなことを思う。
そしてストンと私の前へ腰を下ろしたデンちゃんは、冷たくなった手の平で私の頬を挟み込んだ。
「——冷たい」
「俺はぬくい」
かなりの至近距離で私を見つめたあと、おでこへ口づけてきた唇は、まだひんやりとしていた。
「あのさ、デンちゃん」
もう、いろいろ考えるのも面倒だ。さっさと今日のあれこれを言ってしまおう。
「どした?」
「——じつは今日ね?」
けれど、私ひとりの判断で話してもいいのだろうか。
私が瑠美とデンちゃんを見かけたことをいえば、その経緯も話さなければいけなくなる。
どうしてあの店に私が行ったのかを問われれば、オーナーの話もしなければならなくなるだろう。デンちゃんはオーナーのいまの仕事を知らされていなかった。さらにどうしてあのとき、私がデンちゃんを無視したのかってことにもなってしまう。
「じつは——、なに?」
「ああ、うん。瑠美の体、大丈夫だったかなと思って?」
「あー、うん」
そしてデンちゃんは煙草へ手を伸ばし、カチッと火をつけた。
「悪阻が酷いだけ? いまのところ、問題はないらしい」
「——そっか。いま何ヶ月だっけ」
「4ヶ月に入ったところかな」
もう4ヶ月。
だけど今日のデンちゃんから察するに、産むことが決定したわけではなさそう。