ガラクタ♂♀狂想曲
「体小さいのに、お腹大きくなったら大変だろうな」
「——小さいんだ?」
「ん、かなり。こんぐらい、ちっさい」
そしてふざけて親指と人差し指で、ちょっとだけのポーズを作る。
確かに今日見た瑠美は、デンちゃんの半分しかないと思えるほど小柄な人だった。あれから自ら瑠美の話をしなくなっていたけれど、聞けば難なく応えるデンちゃん。
私たちが出会ったころのように、瑠美のことを好きだ好きだというのも口に出さなくなっているけれど、聞けば答えるのだろうか。
「ショコちゃーん。寒いし続きはお風呂で話そ。バイトの面接のこととかも聞きたいし」
どうなのだろう。
無条件で傍にいてほしいといったデンちゃん。
「ほら早くー」
「わかったよ」
なんだか、どれもこれも、話すタイミングを失ってしまったかもしれない。
いつのまにかお湯が張ってあり、お風呂を急かすデンちゃんに腕を引かれバスルームへ向かった。
「うあー、あったかー」
そしていつものように、狭い湯船へふたり一緒にトプンっと身を沈めた。
「うあー、生き返るー」
「あはは」
「うあー」
おじさんくさい声を出しつつ、身を寄せ合うように背中から抱きしめられる。私の体も冷えていたようで、縮こまっていた細胞に血が流れていくような感覚をしばらく楽しんだ。
そういえばオーナーは、私とデンちゃんの反応が似ていると言ったけれど、どうなのだろう。自分では、そうは思えない。
「それでどうだった? バイトの面接」
「うーん」
「なにイマイチ? 面接の人にへんなこと聞かれたとか?」
「そう言うんじゃないけど…。なんか、そこの責任者の人がすごい若いから、ビックリしたかな」
゛コーキさん″の店だということを、今日じゃなくてもいつかはデンちゃんに言ってもいいのだろうか。秘密を作ってしまったようで気が重い。
「それって男?」
「んー、男」
「若いって、どれくらい?」
「えー…、」
「イケメン?」
「どうだろ。そういえば、バイトに女の子がたくさんいた」
「いいねえ〜」
「デンちゃんってさ? 同じホストで、普段も連絡取り合っちゃうほどの仲良しさんっている?」
「なんで?」
これでは、少し唐突すぎたかも。