ガラクタ♂♀狂想曲
「それじゃショコちゃんは、いまも連絡取り合ってるキャバ嬢いる?」
「いない」
待機のときなどにお喋りを楽しんだことは何度もあったけれど、そこまで仲良くならなかった。
「俺もビミョーかな。前は尊敬してる人がいたけど、もう辞めちゃったから今はいないかも。俺って人見知りだし」
「……ふーん」
それがきっとオーナーだ。
「だけど新しいショコちゃんとこは違うかも。いつから?」
「明日」
「——明日ぁ?」
「うん明日」
なんだかこのままでは、どんどん深みにはまっていくような気がする。
「なんかかなり急だけど、俺もショコちゃんが働いてるとこ見れるチャーンス」
「慣れるまではダメだからね。それにあわなかったら、すぐ辞めるかもしれないし」
やっぱり明日、直接きちんと確認しよう。
なんだかヘンなことに巻き込まれた気分。だけどこれは自分で蒔いた種でもある。頭が痛い。
私が何食わぬ顔で車から降りていたら、こんなことにならなかっただろうと思えた。
だけどあまりにも突然で衝撃も大きく。
あのとき見たデンちゃんは、お腹の赤ちゃんを気遣ってのこともあるのだろうけれど、瑠美の肩へコートをかけていた。なによりふたりとも、絵になりそうなほど楽しそうに笑っていた。
若さだけでは、絶対瑠美に負けることなんてないと勝手に思い込んでいた自分も悪いのだけれど、想像していたよりお似合いのふたりだった。
「はあ…」
気前よく送り出しておいて卑屈モード突入。
どうせ見かけるのなら、入り口で立っているふたりに私が気づかず、偶然鉢合わせとかがよかった。それならきっと、こんな面倒なことにならなかったかもしれないのに。