ガラクタ♂♀狂想曲
「そんなの簡単ですよ。さっさと私を不採用にしてくださったらいいのです」
するとふっと短い息を吐き出したオーナー。
名案だと思う私。
「それは困りますよ」
「——どうしてですか」
「津川さんは理解できないと思いますけれど、それではわたしの道理に反するのです。だからこれはきっと、なにかの縁なのだろうと昨夜そう思い直しました」
よく意味がわからない。だけどなにかの縁を感じるのは確か。
「しかし本当に津川さんの間の取り方、喋り方があいつにそっくりです」
「……そうですか?」
「ええ、とても」
そしてどこか懐かしいものでも見るかのように、うっすら目を細めたオーナー。私自身、似ているだなんて思わないけれど、一緒にいることが増えたから、もしかしてそうなのかもしれない。
「津川さん」
「はい」
「いまふと思いついたのですが、わたしにひとつ提案があります」
「提案ですか?」
「はい。おそらく全てがうまくいくはずです」
「——なんでしょうか?」
「昨夜わたしと津川さんが一緒だったことは、このままあいつに伏せておきませんか? ここへ愁が顔を見せにきたとき、はじめて、津川さんの雇い主がわたしであると知り、わたしと津川さんは、そんな愁に話を合わせるのです。きっとそれなら、なんの問題にも発展しないと思います」
少し驚いてしまった。
昨夜のあれは、なかったことにするとオーナーからの提案だ。それは私にとって、ありがたいような気もする。
だけどなぜ、オーナーがそんなことを言い出すのか。私はまったく理解できずにいた。
「どう思われますか?」
そして椅子へ腰を下ろし、指でトントンとデスクを数回叩いたオーナー。
返答を急かされている気分になっているところへ、さらに私を見上るように視線を上げ頬杖をついた。