ガラクタ♂♀狂想曲
「愁の本名、水田 隼人のあだ名ですね。しかしデンちゃんとショコちゃんとは、いかにも———」
オーナーはそう言って、どこか楽しそうに笑う。
「いかにも…、なんでしょう?」
「なんだかどちらも、どこかのイメージキャラクターのような呼び名ですね」
「……ええ、まあ」
バカにされているのかと思ってオーナーの表情を見ても、よくわからないので曖昧に応えた。
「だけど、そうですか。なんだか愁らしくて、可愛らしい発想ですよね」
オーナーは続けて口を開く。
「そうそう、わたしはよく、愁から津川さんの話を聞いておりました。これはまだ、わたしがホストをしていたころの話ですが」
「——そうなんですか?」
「ええ」
それはちょっと意外。今度は私が驚いてしまった。
だけどよくよく考えれば、デンちゃんにしか呼ばれないショコを知っていた。
「津川さんと愁は夜の街で知り合って、さらに愁が教えた番号は仕事で持ったほうの携帯番号…」
オーナーは何かを思い出すように、リズムよくトントンと人差し指で自らの頬を叩く。
「なのにそのアドレスにあった名前は"ショコちゃん"だけ。あいつのやることって、本当に可愛いのです。こうやってわたしが偶然にも、そのショコちゃんと仕事をすることになるだなんて、思いもよりませんでした。昨夜の愁との鉢合わせも、やはり運命的な香りがします。まあ実際あれはすべて偶然の賜物ですから、運命と言い切っても相違はないでしょう」
この人って、まさか。
だけどそんなことって、あるの?
「…あの、オーナー?」
「どうされました?」
落ち着き払ったその態度を見れば、私の勘違いなのかもと思う。けれど。
「————デンちゃんが好き、なんですか?」