ガラクタ♂♀狂想曲
オーナーの形振りや、人のひきつけ度合いは、一端のホストとは違ってどこか洗練されて見える。デンちゃんも、尊敬する人だと言っていた。
お金もあって、気品もあって、立ち振る舞いも取ってつけたような貧相なものではなく、とても優雅。
本気で掛かれば、寄ってこない女などいないだろうと思えるのに。
「——津川さん」
すると驚くべきことに、この沈黙を先に破ってきたのはオーナーだった。
「これはご自身の問題ではないのですし、そんなに難しく複雑に捉えないでくださいね」
「……」
「いっそ愁が目の前から消えてくれればいいのにとも思ったこともありますが、自分のほうが消えればいいと思っただけです。こうやって新しい仕事に没頭すれば忘れますから」
「———デンちゃんは、オーナーの気持ちを知っているのですか?」
「あはは、そんなまさか。抑え込んでいたからこそ、いまに至るのです」
こんな話をデンちゃんが聞いたら、相当驚くだろうと思えた。