ガラクタ♂♀狂想曲
「そのような立派な考えをお持ちのオーナーなのに、どうして私を不採用にしないのですか? やっぱり理由がわかりません」
「———わたしの元でショコちゃんが働いていることを愁が知れば、どのような反応をするでしょうか。きっと愁も同じようにうろたえるでしょうね。その姿が見てみたくなりました」
「……」
「そうそう。あいつが真面目に仕事へ入ったら、トップでも狙えますよ」
話を変えるためなのか、突然オーナーはそう言ってスイッチでも換えるようにトンっとデスクを指で弾く。
「実際一部のみ入店してたアルバイトの中では飛びぬけておりました。仕事用の携帯があの状態で、営業していないのにもかかわらず、レギュラーに迫る勢いの日がありましたから。毎月そこそこ売り上げていましたね」
「…そうですか」
ホスト話はデンちゃんの口から聞くことがないので、耳に新鮮な話題ではある。だけど思わずため息。
なんだか心が晴れず、それどころか暗雲立ちこめ、どんどん気が重くなってくる。
「ご心配なさらないでください。今回の件をうまく利用すれば、津川さんにとってかなりのチャンスだと思います。わたしにとってもそれは同じで、これからは気持ちを切り替えつつ愁と会うことが出来ます」
言葉の意味がわからず、無意識に首を捻っていた。
「津川さんはこの際、わたしのことを利用なさってみてはいかがでしょうか」
オーナーを利用する?
それって、どういうことだろう。
ふたたび黙り込んでしまった私は、そのままオーナーが口を開くのを待った。
「プ」
すると突然、短く勢いのいい息を吐き出したオーナーは顔を下へ向け、激しく肩を揺らす。
「——く、くッ、クククク」
え?
だけど私の目に、それがあまりにも衝撃すぎる光景だったので、しばらく放心したまま、ぽかんと口を開けてしまった。
「じょ、冗談」
目に涙をため、顔を上げたオーナーは、ありえないほど表情を崩しながらお腹を抱えて笑っていた。