ガラクタ♂♀狂想曲
「———冗談?」
「そ。だけどごめん津川さん、かなりウケる」
「へ?」
きっと私はいま、鳩が豆鉄砲食らったようにかなり素っ頓狂な顔をしているに違いない。
「あー、ヤバイこの展開ほんと。なんかごめんなさい、俺が悪かったです」
そしてオーナーがゴホゴホと咳き込むほど笑ったので、ようやく事態がつかめてきた。
「…あのォ」
「よく考えてみてください。そんなのが理由なわけないでしょう? たしかに愁のことは可愛がっていましたけれど、それだけです」
そう言いながらネクタイを整え、目尻に溜まった涙を指で拭ったオーナー。
呼吸を整えるためなのか、ふーっと息を吐き出す。
「津川さんに合わせてみただけですけれど、少し度が過ぎましたね」
「……」
「それではもう時間ですので、お遊びはここまでです。そろそろ仕事内容の説明にでも移りましょう」
そしてふたたびデスクをトンっと。
「それではまず、制服をお渡ししなければいけませんね」
どこかにスイッチがあるんじゃないかってほどの変貌ぶりで呆気にとられてしまう。
「津川さん?」
「——はい」
「わたしは瑠美と愁より、あなたと愁を応援しておりますからご安心を」
そしてすくっと立ち上がったオーナーは、さらりとそう言って書類の束を手に取った。
「いまのはお遊びが過ぎてしまったお詫びで、わたしの本心です」
きゅっと口を横に結んだ。