ガラクタ♂♀狂想曲
「じゃあ」
そしてすくっと立ち上がる。
「うんバイバイ。頑張って」
玄関まで見送るようなことなど勿論しないけれど、私も身を起こしそれに応えた。すっかり出支度を済ませ、ううんと唸りながら伸びをしたデンちゃん。
「ありがとショコちゃん」
そう言って腰をかがめ、また私の目線と同じところまで下がってくる。
そしてもう一度、だけど今度は唇を合わせてきた。
「行って来るね」
私の目をじいっと見てそう言ったあと、目を細める。
「うんバイバイ」
だけど。こういうのってどうなのだろう。
まるでいまから働きに出て行く夫を送り出す愛しい妻へ、後ろ髪を引かれるようなキス。
——挨拶代わり?
いまデンちゃんに聞いてみたい。でもそんなことを私が気にしていると思われたらイヤだし。だって、そんなことを聞いたら、私がまるでデンちゃんのことを好きみたいだし。
そうじゃないから、聞かない。
だからサラッと流す。