ガラクタ♂♀狂想曲

だけどこの静かな時間が気まずいというより、むしろこっちのほうが気が楽。

それでも数分すれば、こんなおかしな二人を運ぶこの空間に肩凝がしてきた。


「——その角を左に折れてください」


運転手に向かいそう言ったオーナーの声に顔を上げた。


「あそこで降ろして下さい」


外に目をやれば、ファミレスの看板が目に入る。


「できれば美味しいお酒でもご一緒したいところですが、ここもなかなか美味しいんですよ」


オーナーはそう言って手早く代金を支払い、先にタクシーから降りてしまった。そして私が降りたことを確認してから、足を前へ進める。


「お腹は減っていますか?」


振り返り肩越しからそう言ったオーナーは歩幅を少し緩め、私の隣へ並んだ。


「いえ」

「そうですか」

「ですがオーナーは、私のことなど気にせず食べてください」


この言葉遣いのせいもあるのだろうけれど、やっぱりなんだかヘンに身構えてしまう。周りの人たちの目に私たちって、どんなふうに映っているのだろう。


「——ああ、津川さん。オーナーって呼ぶのは、こういった場合ナシにしていただけますか。愁の話なのですし、堅苦しいでしょう」


さらに続けるオーナー。


「それになんだか津川さんもシュンと肩を落としておられるので、これではわたしが部下を押さえつけているみたいで心苦しいです」

「——わかりました」

「コーキのほうでも構わないですよ」

「へ?」

「そのほうが、堅苦しくないでしょ」

「——いや、ですけど」

「おそらく津川さんは、わたしのことをそう呼ぶことになるでしょうし」


なんだか意味深な言葉を残し入り口のドアへ手を掛ける。また私を先に中へ通すオーナー。

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