ガラクタ♂♀狂想曲

「ああ、津川さん。理由はあとできちんとご説明します」

「——は?」

「こちらへ」


呆気に取られたままの私の腕を取り、空いてる席へスタスタと私を連れ歩いていく。

どういうこと?


「さあ、どうぞ」

「——知ってたんですか」


会ったときのために作戦を練るといっていたはず。いまここでデンちゃんと鉢合わせしているのにも関わらず、焦っている様子がない。それどころか、悪態ついてた。

現状が把握できない私は心臓がびくんと跳ね上がって、それからすぐどかんと落とされた気分。それに頭もふわふわして、足なんて縺れてしまいそうなのに。


「ここに愁と瑠美が一緒にいるのは、さっきの電話で知っていました」


そう。瑠美もいた。


「津川さんの場所から、見えましたか?」

「———どうして、こんなことを」


おそらく席を立ち上がったところだったデンちゃんの、真向かいに女性がいた。


「あいつ津川さんから瑠美が見えないように、すっと視界のあいだへ立ちはだかったでしょ。気づきましたか?」


返事を飲み込み、そのまま黙り込む。
一瞬見えた、あれ。デンちゃんと違って、こちらに顔を向けてはいなかったけれど、あれは瑠美だった。


「だけどあいつ、ほんと。俺にも気づいたはずなんだけど」


そして胸ポケットから取り出したティッシュでテーブルを拭きながら、ホールを見渡すオーナー。ちょうど手すきになった店員に向かって手を上げた。


「こういうのは、すでにほとんど綺麗な状態でテーブルが空いてたら、勝手に座ってくれたほうが店的には楽。だけど片付いてないのに、急かすように座られると迷惑」


私に対して同意を求めているのか、顔を上げて少し頭を傾げる。


「だけどここって、煙草吸ってもいい席だったかな」


独り言のようにそう言い、ぐるりと周囲を見回してから煙草を取り出してテーブルの上へ置いた。

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