ガラクタ♂♀狂想曲
「俺、煙草吸うけど大丈夫?」
「どうぞ」
あまり煙草を吸うイメージがなかったオーナーなので、少し意外かも。などと現実逃避的なことを、ぼんやり考えた。
そして店員から受け取ったメニューを開け、クラブサンドとコーヒーを素早く選んだオーナー。
「——津川さんは、なにする?」
正直言って、なんでもいい。
「ビール?」
「……いえ」
するとパタンとメニューを閉じたオーナー。
「ホットはふたつ。注文は以上で」
そう言って私の注文を済ませ、煙草へ火をつけた。さっきから私の目の端にチラチラ入り込んでくるデンちゃんがいたテーブルは、すでに片付け終わっているようだ。
「——さて、どこから話そうかな」
私の視線の先を鋭く気づいたオーナーが、ちらりとそこへ顔を向けた。
「心配しなくても、愁はすぐ戻ってくる」
なぜかそう断言し、煙を吐き出した。そして携帯を取り出し履歴をチェック。
「いま相当あいつの頭もパニックになってるはずだけど、このまま去ってしまうような真似は絶対しないから」
「———どうしてそんなことが、わかるのです?」
「愁がここへ戻ってきたときのために、敬語はナシのほうがいいと思うけど? それとも、そのまま雇い主と従業員で押すほうがいいかもしれない。どっちにするべきか悩ましいな」
少し楽しそうなオーナー。
私の場合そこまで器用に切り替えられないし、それに頭が回らない。
「……どうして、こんなことを」
ようやく頭の中が、振り出しにまで戻ることができる。ここにデンちゃんと瑠美がいるのを知っていたオーナー。
「ちょっとフェアじゃなかったけど、お灸のつもり。ほんと調子良すぎるから、あいつ」