ガラクタ♂♀狂想曲

「俺はさ、そのこと瑠美から聞いていたから」


瑠美から、聞いて——


「え?」


顔を上げた。瑠美とオーナーが、連絡を取り合っている?


「そうそう、そういえばさ? このあいだカフェであいつら見かけたとき、津川さん瑠美の表情までは見てなかったでしょ」


あのとき。私、どうだっけ。


"お前、こんなところで何してるんだ?"

"えー、コーキさんこそどうしたんですか? 暇してるなら、店に来てくださいよ"


「津川さん、顔逸らせていたし」

「あー…、」

「あのとき逸らせず見ていたら、もしかして気づいてたかも。瑠美は俺から視線を逸らせていたし」


騙すのが苦手だといったオーナーなのに。
私のことを気にかけてくれているようで、全然そうではない。一体なんのためにこんなことを。

すると私の携帯ではない、オーナーのほうの携帯が鳴りはじめた。


「もしもし」


そして迷わずそれに出たオーナーは、ちらりと私を見る。




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