ガラクタ♂♀狂想曲
小心モノ
煙草の灰が、ずいぶんと長くなっていた。
早く灰皿へ落としたらいいのに。
「いま取り込み中だから、あとで折り返す」
私の視線に気づいたのか、灰皿の上でポンッと煙草を叩いたオーナー。
「なんだ、その話。俺は別に構わないけれど? だから折り返すっていってるだろ」
そして煙草を灰皿へ押し付けた。しばしの沈黙が続く。
「お前さあ。さっきから何の話してるか、俺にはさっぱりだぞ。お前こそ突然なんだ?」
黙り込んだオーナーは、携帯を耳に押し当てたまま外へ目を向けた。私もオーナーの視線の先を追う。
そこには同じように携帯を耳に押し当てたままのデンちゃんが、ぼんやり暗がりに立っているのが見えた。電話の相手はデンちゃんだ。
「だから何の話だ?…——っておい?」
外のデンちゃんの影がゆらり動いた。どうやら電話が切れてしまったらしい。オーナーは短く舌打ち。だけど、こっそり口の端を上げる。
「今からこっち来るから」
「——え」
「これぐらいしないと、あいつには無駄。適当でいいから俺に話を併せて。悪いようにはしないから」
意味がわからない。
だけど確かに外の影はこちらに、店の入り口に向かって動き出す。
それと、はじめてデンちゃんと瑠美を見かけたあのとき、瑠美がオーナーから顔を逸らせていた理由はなんだろう。ふたりのあいだには、デンちゃんも知らない関係があるとでもいいたかったのだろうか。