ガラクタ♂♀狂想曲

「津川さん」


するとオーナーから名前を呼ばれた。


「……はい。なんでしょう」

「まさかとは思いますが、津川さんこいつのこと、ご存知です?」


どう返答していいのかわからない。思わず言葉を飲み込んでしまった。


「津、」

「ショコちゃん!!」

「うるさいよ、お前。——てか、まさか。津川さんが、ショコちゃん? てこと?」


あっぱれだ。
一瞬空気が止まった。

ふたりは私の言葉を待っている。


「……はい」

「ほんとに?」

「ええ」

「それは驚いたな。ほんとすごい偶然」


そしてオーナーは、ひょこっとデンちゃんを見上げる。


「だけどお前、それなら手間が省けたというか、まあ座れよそこに」


口を閉ざし立ち尽くしているデンちゃんに、声を掛けた。


「おい、聞こえてる愁?」

「——すみません、嫌です」


すると突然私の腕を掴んだデンちゃん。顔を上げれば、私の目をまっすぐに見てくる。


「立って、ショコちゃん」

「おい愁」


オーナーが、すかさず声を上げた。私の腕を掴んでいたデンちゃんの手は、その声に反応したのかピクッと力が入る。


「お前いま、自分が何してるかわかってるのか? 俺のお連れさんだぞ」

「わかってます。だけどズルイです。いまそんなこというの」

「——おっま、ずるいって。ガキかよ」


だけどそれは決してバカにしたような言い方ではなく、力が抜けたようにやんわりそう言ったオーナー。目をやれば、少し目を細めデンちゃんを見ていた。
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