ガラクタ♂♀狂想曲

『———お腹の子は、隼人くんの子よ』

「……は」


いい加減にしてよ。
だけどソーサーの上にカップを戻そうとしていた私の手元が思わず狂ってしまい、ガチャンッと音が鳴る。コーヒーがこぼれてしまった。


『隼人くんがパパなんだから』

「そんなはず、ないです!」


場所をわきまえず、思わず声を荒げてしまった私。怒りなのかなんなのか、手元が震えてカチカチとカップが小刻みに音を立てる。

するとカップにすっと伸びる手。


「——ちょ、ちょっと!」


その手の先を見上げれば、オーナーが私の手から携帯をすっと奪い取った。そのまま、黙って自分の耳へあてる。


さっきの騒ぎでちょっとした注目を浴びているので、声を落として何度か呼びかけるも、オーナーは素知らぬ顔。

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