ガラクタ♂♀狂想曲
「瑠美が同士なら、私たちはライバルですね」
「……なに言って」
「私は負けませんよ。だけど共にフラれてしまったら慰めあいましょう」
ぽかんと口を開け、呆気に取られた間抜けな顔をしたオーナー。そのあと、はじめて懐っこい顔で笑う。
「いいですね。それでは、そうしましょう」
「言っておきますけれど、冗談じゃないですよ」
「あはは。わかってますよ。ありがとうございます」
ひょこっと肩を上げたオーナー。
「あいつがこんなにも短期間ですっかり津川さんへ心を許してしまったのも、いまここまで悩んでいるのも、なんだかようやく理解できた気がします」
「どういうことですか」
「どうせなら津川さん、この際、フラれてみてください」
「それはダメです」
「フッてみるのはどうでしょうか? 隼人が俺のところへ泣きついてきてくれるかもしれません」
「それもダメです」
「あはは」
肯定も否定も、ハッキリと口には出さなかったオーナーだけれど——、さっきまでより表情が柔らかくなった気がした。
帰りのタクシーでは、行きのとき無言状態だったのが嘘のようにたくさん話をする。
やはりデンちゃんの話をしているときのオーナーの表情が、一番穏やかに見えると思えた。
「あいつ指輪を贈るつもりなんですよ津川さんへ」
「——え」
「それが俺と津川さんを会わせかった理由だと思いますよ。むしろそれしか考えられません。三男ですから家継ぎではないですけれど、そのへんのことについて結構いろいろ詳しいから俺」
「そうなんですか」
いまみたいな現状ではなく、あれこれない状態のとき"ショコちゃんに会ってほしい"とオーナーに言っていたなら、どうなっていたのだろう。
おそらくオーナーも今日みたいな行動をしなかったんじゃないかと思えてきた。デンちゃんの未来を案じているオーナー。