ガラクタ♂♀狂想曲
「あまり複雑に考えないでください。それに心配されていたらアレなので言いますが、俺はあいつよりモテますし女も虫のように寄って来ます」
「———そりゃオーナーみたいな容姿と、家柄と、三男? あと学歴は知りませんが」
「K大です」
「それなら女性は見て見ぬ振りするなんてできないでしょうし、それどころか失礼に値します。当然ですよね」
「……いいますね。なんだか津川さんとは、これからいい友達になれそうです」
トモダチ。
"お友だちになってくれませんか"
ふと、デンちゃんにはじめて声を掛けられた日を思い出した。なんだかおかしくて、思わず顔が緩む。
「どうされましたか?」
「友だちはダメです。私とオーナーはライバルであって、さらに雇い主とアルバイト。ただそれだけです」
「あはは」
「今日はいろいろありがとうございました」
気が付けば、もうマンションの前についていた。
見上げれば部屋の電気は消えている。
タクシーが見えなくなるまでオーナーを見送ったあと、足を踏み出した。