ガラクタ♂♀狂想曲
「ちょっとデンちゃん?」
この子の名前は、デンちゃん。
本名なんて知らない。
「でもあいつ彼氏のことで、すごく悩んでて」
こうして延々と大好きなルミちゃんの話をするデンちゃんは、私よりも4つ年が少ない。
「早いところ別れてくれたらいいのにね?」
「俺もさ、ずっとそう言ってるんだけどー」
このデンちゃんという男は、大好きなルミちゃんを追って東京まで出てきた田舎者。女の子は誰もがみんなメリーゴーランドや夜景、水族館ではしゃぐと思っている、まだ夢見がちな男の子。
「だけどさあ? おかしな話だよね」
「———なにが」
ひと呼吸あけたデンちゃんはそう言って、まるで煙を嫌うかのように目を細めて紫煙を吐き出した。
「大好きな彼氏がいるのに、デンちゃんとよくふたりで会ってるんでしょ?」
私がそう言うとぐしゃっと乱暴に火をもみ消した。そして不服そうにぷくっと頬を膨らませる。
これはきっとこれから言われることを予想している反応だ。だから決して頭は悪くないと思う。
「そうだけど」
ぶすっとそう応えた。