ガラクタ♂♀狂想曲
「寝てるの?」
「——力が抜けた」
「チカラ?」
顔を上げたデンちゃん。
私の顔をぼんやりとした目で見上げた。これはさっきまで寝ていた顔に違いないと思う。
こんな状況でよく寝れるものだと思う一方で、電気もつけず膝を抱え小さくなっているデンちゃんはオーナーがいっていたようにズル賢いとも思えた。
「どんどんチカラ抜けた」
「……いつ、帰ってきたの」
「ショコちゃん今日はここへ帰ってこないんじゃないかと思った」
「まさか」
「なんか俺、最近ダメで。ショコちゃん切れると、チカラが出ない」
「——アンパンマンみたいなこと言ってるし」
「呆れただろ」
「んー」
「やっぱり」
そして大きな溜息とともに、カクンと頭を項垂れる。
さっき見せていた荒々しいデンちゃんはどこへ行ったのやら。拍子抜けてしまいそうだ。
「だけどビックリ。瑠美ひとりにして、大丈夫なの」
「もし俺がショコちゃんだったら、今日ここに帰ってきたときひとりのほうが、耐えられないと思った」
それでここに帰ってきたの?
「呆れた」
「ああああぁぁ……、」
ここに私が帰ってこないと思った、と言ったのにも関わらず。その舌の根も乾かないうちに、そんなことをいう。行動と言動が矛盾していた。だけど私の気持ちになって考えてくれた結果がこれなのだ。
だから隅っこで、そんなに小さくなって待ってたのだろうか。
なんかどうしよう。かわいい。
無視されたことや、デンちゃんの家に瑠美が住んでいることとか、ほかにもきちんと話し合わないといけないことはたくさんある。だけど目の前で肩を落とし小さくなっているデンちゃんを見れば、なにもかも流して抱きしめたくなってしまう。