ガラクタ♂♀狂想曲
「今日、俺が瑠美と会っていたのは、悪阻が酷くて何も食べられないらしいから。だけど外食だとまだ食べれるって言うし、連れて行ってあげて…、あと——」
「まだなにも聞いてもいないのに、わざわざ言うのはどうして? やましいことをしてたと思うから?」
少し考えたデンちゃん。
「いま言わないと、大事なことを考えないといけないときでも、ずっとショコちゃんのことが頭の隅っこから離れなくなってしまって困るから」
「いま思いついたでしょ」
「……それもあるけど、ほんとだし」
「それじゃあ、デンちゃんの頭から私が離れないとき、会いたくなる?」
こくんと頷くデンちゃん。
「すごく会いたくなる」
「——バカじゃない?」
ほんと呆れてしまう。
まるで子どものように素直に応えるデンちゃんの中で、何をおいても瑠美が一番なのはわかる。自分の弟か妹がお腹の中にいる瑠美は、その子を産みたいと思っているのだから守らないわけにはいかないと思う。好きだから。
それなのに私のことも手放したくないだけなのだ。都合がいいにもほどがある。
だけどさ、デンちゃん。
きっと私のことを好きになってるよ。今回のことで、そう思うことができる。少しは自信持っていいかな。
「もう一生悩んでなさい」
「しょこちゃーーーーん」
「本当は半分寝てたでしょ」
「……ちょっと」
「ばか」
「ほ、ほんの少しだけだって…っ」
そして見つめあう。暗黙の了解のように、唇をそっと重ねた私たち。ゆっくりと唇を離せば、そのまま身を寄せ合うように抱き合った。間近に嗅ぐデンちゃんの香りが、私の脳をじんじん刺激する。