ガラクタ♂♀狂想曲
「そうだなあ。——瑠美が出産するまで」
「え!!!!」
「どうして驚くの」
「えええ!!?」
「なによ」
「む、無理、無理。そんなに待てない、我慢できない俺。無理っっ!!!」
「だけど私だって我慢するんだから、デンちゃんも我慢してよ」
「———ショコちゃんも?」
ピタリと手を止めたデンちゃん。
「今日のことが原因で瑠美のお腹の子に何かあったりしたらデンちゃんどうするつもり? 私と会うたび、エッチするたび、きっと今日のこと悔やむよ」
言葉は悪いかもしれないけれど、瑠美のお腹の子が流れようが、どうなろうが、デンちゃんがそれを気に病まないのならいい。だけど、そうじゃない。
「——ズシン」
「口で言わないの」
オーナーがデンちゃんに向かって言っていたことは、ほかでもない、ただデンちゃんのことだけを考えてのことだった。あの人は仕方ない。デンちゃんのことしか興味がないのだし。
だけど私は違う。
「だけどさ? 産まれるまで、まだ半年ぐらいある…っ」
「我慢できない?」
「…………わかったよ」
そして私を抱き寄せたデンちゃん。
「これならいいだろ」
なぜかポンポンとリズムよく、撫でるように背中を擦ってくる。大見得はって自分で言い出したことなのに、決まったら決まったで、急に鼻がツンとしてきた。
瑠美がお腹の子を産むとか、産まないとか。そんなの知らない。デンちゃんのお父さんとつき合っていようが、ぼっこぼこに殴られようが、それも知らない。ハッキリ言って、いまそんなこと私にはまったくと言っていいほど関係ないことだ。けれど、それでデンちゃんが心を痛めるのはイヤ。
かといってこれまでと変わらなく過ごしていたら間延びしたようなダラダラ関係がずっと続くと思う。そしてきっと今日と同じようなことを繰り返してしまう。それはもっとイヤ。