ガラクタ♂♀狂想曲
飾りモノ





「———クシュ」


誕生日に届いたソファーは、生成り色したもの。


「クシュン、クシュン…、」


折り目をつけたカタログを熱心に見ながらカラーを選んでいたデンちゃんは、淡いピンクと生成り色のどちらにしようか悩んでいたけれど、私はこの色を希望した。ピンクのソファーでくつろぐデンちゃんを想像したら、私が直視できないような気がしたから。

大して広くもない私の部屋に、どかんと居座るふわふわのソファー。早速デンちゃんのお気に入りスペースとなっていた。


「デンちゃん」


時計に目をやる。もうすぐ朝がやってくる午前5時だ。

今日というかもう昨日だけれど、うちへは来ないのかと思っていたデンちゃんの連続3回くしゃみで目が覚めた私。

太陽が昇れば幾分ましにはなるけれど、朝のこの時間はかなり冷える。身を縮めながら手に取ったフリースを肩から羽織った。


「デンちゃん」


ベッドから這い出してソファーの横に身を屈め、デンちゃんの顔を覗き込む。


「ねえデンちゃん」

「…んー、」


ぴくっと瞼が微かに動き、ゆっくりと上がった。


「寒いでしょ」


まだ薄暗い部屋の中、寝ぼけた顔をしたままのデンちゃん。それでも私の頬へ手を伸ばしてきた。

だけどすぐまた目を閉じてしまい、それからゆっくりと頬を撫でてくる。


「デンちゃん」

「んー…」

「ベッドで寝よ」

「……」

「ほらデンちゃん」


うっすらと目が開き、私の顔へ焦点をあわせてくるデンちゃんからは、お酒の匂いがした。夕べは仕事で、たくさん飲んだのかもしれない。

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