ガラクタ♂♀狂想曲
「ベッド?」
「うん」
「————解禁?」
「違う」
すると低く唸ったデンちゃん。
「ほらデンちゃん、ベッドいこ」
「じゃあ解禁?」
「違う」
「うー」
「ほら早く。なんか手も熱いし。それにくしゃみもしてたし、声変だし。風邪ひく」
「———抱っこ」
そしてデンちゃんは私に向かって両手を伸ばし、そのまま首へ腕を巻きつけるように絡めてきた。
「…仕方ないなあ」
ベッドへの連行は一旦諦め、素直にデンちゃんの腕へ包まった私。デンちゃんは寝起きとは思えないほどの力で、抱き寄せてくる。
「——ショコちゃん、いい匂い」
「デンちゃんは、お酒臭いよ」
目を閉じたまま、クスクスと笑うデンちゃん。
「すみませんね」
「いえいえ」
「じゃあショコちゃん」
「なに」
「いまから、俺の口真似してね」
なにを言ってるんだか。
この脈略もない会話は、まだデンちゃんの頭が覚醒していないんだろうと思う。
「いまから俺が言う言葉、繰り返すだけでいいから」
煙草とお酒のせいか、寝起きも重なっているのでいつもより喉が潰れてしまったようにしわがれたデンちゃんの声。
「ショコちゃん?」
「はいはい、どうぞ」
「最初は、カイ」
「——最初はかい」
「違う。カイだけ。"か・い"、KAIで、カイ」
「かい?」
「おっっけいッ!」
お酒も、相当残っているらしい。
「次は、キン」
「きん」
「ぐっっ! それでは、ふたつ繋げてどうぞ」
「カイ、きん…」
「いえっさー」
「は?」
「かいきん」
解禁?
「って、もお!」
あれから本当にエッチをしてない私たち。こうやってデンちゃんの腕に抱かれると、やっぱり身体が少し反応してしまうけれど。我慢。