ガラクタ♂♀狂想曲

「——痛い、ショコちゃん」

「お酒残ってるし寝ぼけてるクセに、そんなとこで頭使わないの」

「うへ」

「ほらベッドで寝なよ」


だけどこんなふうに酔っ払ってうちへ来ても、ソファーで小さくなって寝ているデンちゃんを見れば心も痛む。


「んー、わかった。ありがと」

「ほら早く」


のそのそと起き上がって、そのままベッドへダイブしたデンちゃん。すぐしたら、また寝息が聞こえてきた。


「まったく」


エッチをオアヅケにすると私が決めたあの日、朝がくるまでここにいたデンちゃん。そのとき、はじめてデンちゃんの口からオーナーのことを聞いた。源氏名は光に輝くで、光輝。

現役で大学入学してホストもこなし、卒業後は就職もせずナンバー1ホスト兼、幹部職もこなしていたそう。お酒にはめっぽう強く、一体いつ寝ているのかと思えるほどなのだそうだ。学生時代もテスト期間だろうが、欠勤などほとんどなかったらしい。しかもどれだけ睡眠時間を削ったとしても顔に出ることはなく、いつも優雅で話題も豊富だったとか。

こうした話を聞いていると、いまのデンちゃんみたいな感じなのかと思ったけど、そうでもなさそう。

デンちゃんが言うには、自分がこれまで出会った人の中で唯一と言えるほど、酒を飲んでも常識がある人で、本当は頭が上がらないほどの人なのに自分と親しく接してくれていると言った。

話を聞けば聞くほど、一体どんなに凄い人なのって思うけれど、確かに並外れた感じは否めないと私も思う。

そしてデンちゃんとの出会いはオーナーからも聞いていた通り、瑠美が2人の架け橋だったそうだ。デンちゃんがホストになったきっかけは、驚くことに瑠美だった。

そんなオーナーとデンちゃんと私。今日は仕事上がりに、3人で会うことになっている。

どんな感じになるんだろう。
ずっと就職活動を続けてはいるけれど、なにも決まっていない私は、そのまま普通にアルバイトを続けていた。

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