ガラクタ♂♀狂想曲
「こちらこそお邪魔しても構わないのですか?」
「そうしていただくと助かりますね。明日はどうしても車が必要なので、申し訳ないぐらいです」
「——まあ、オーナーがご迷惑じゃなければいいですけれど」
デンちゃんは何度かお邪魔したことがあるらしいけれど、私はもちろんはじめて。どんな部屋なのか、少し見てみたい気もする。
「あいつがここに来るんですよね?」
「——あ、はい。終わるころに外で待ってると言ってました」
「わかりました。楽しみです」
そして書類をトントンと纏め、それを封筒の中へ入れたオーナー。話も終わったようで、コートを手に取った。
「お待たせしないように、閉店までには必ず戻ってきます」
袖を通しながらそう言い、壁にかかっている鏡を覗き込みネクタイを整える。
見合いの話は、いったいどこへ。まあ、いいけれど。
そんなオーナーの家は宝石関係を取り扱っている事業を展開している。しかもかなりの大きい規模。ネットなんかで調べなくとも耳にしたことがあった。
すでに私とオーナーは面識もあるのだし、こうして改めて顔合わせをする必要も言ってみれば、本当はもうない。だけどあれからデンちゃんはオーナーへきちんと謝りの連絡を入れ、そして今回の運びとなった。