ガラクタ♂♀狂想曲

そしてオーナーはスタッフの元へ顔を出し、一声掛けながら足早にホールを抜け外へ出て行く。

私はそんなオーナーの背中を見送りホールへ入った。


「——津川さん」

「あ、はい」

「18番お待たせしてるから、先に回って来て」

「わかりました」


氷の入ったグラスをふたつトレイに乗せる。
思わず溜息が出てしまった。いつまでこんな暮らしをすればいいのだろう。

前日のゴタゴタがあったせいで、結局デンちゃんと一緒に過ごせなかった誕生日。届いたソファーの梱包をひとりで剥がした。誕生日を一緒に過ごすと言う約束は、虚しくも消えてしまう。

それでもやっぱりあの日は、外で物音がするたびにデンちゃんが来てくれたんじゃないかと思ってドキドキと胸が騒いでしまった。そんなイケてなかった自分。私もさっさと親睦会へ行けばいいものを、少しの期待を残してずっと家にいた自分が嫌い。

だからオーナーから聞いた指輪のことも、あまり期待はしていないでおこうと思う。というか、すっぱり忘れたい。

なのにさっきからチラチラ時計に目をやっては、時間が全然過ぎないところを見ると、上がり時間を心待ちにしている自分がいる。やるせない。


< 212 / 333 >

この作品をシェア

pagetop