ガラクタ♂♀狂想曲
光りモノ
すでに車に積んであるとこっそり耳打ちしてきたオーナーへ軽く頭を下げ、店を出た。デンちゃんがエビせん好きなことを、私だけじゃなくオーナーも知っていたところでいまさらべつに不思議ではない。
"あいつのことなら、なんでも手に取るようにわかる"
ふと、いつかの台詞を思い出した。だけどだからと言って、わざわざ買っておかなくてもいいような気がする。探せばどこにでも売っているだろうに。
オーナーはデンちゃんが目をキラキラ輝かして喜んでるところを見たいのだろうか。どんだけだよ、エビせん。
そしてデンちゃんが待つコンビニへ向かう。店を出て道路を挟んだ向かい側にあるそこに、デンちゃんの姿が見えた。急かす気持ちは信号で足止めを食らってしまったので、デンちゃんに向かって念を飛ばす。
「——あ」
するとおもむろに何かを取り出したデンちゃんは、それを耳に当てた。携帯だ。
どうか瑠美じゃありませんように。
私の誕生日をデンちゃんと過ごせなかったのは、瑠美が入院したせいもある。あれからお腹のハリを訴え出血した瑠美。切迫流産の恐れがあり絶対安静状態だった。
デンちゃんは髪をかきあげながら時計に目をやり、おもむろに私のほうへ顔を向ける。私に気づいてくれたよう。すっと手を上げた。
だけど、その顔色では何にも判断ができなかったので覚悟を決め足早にデンちゃんの元へ走り寄る。
「それだったらジンに聞いて。俺に聞かれても、全然わかんねーし」
私の肩へ手を回し抱き寄せるデンちゃんは、耳元に口を寄せ"お疲れさん"と言った。
「もう切るぞ。じゃあな」
デンちゃんが誰と電話中だったのかまではわからないけれど、瑠美じゃないことは確かだ。胸を撫で下ろす。