ガラクタ♂♀狂想曲
「仕事忙しかった?」
不思議な感じだ。店を出てすぐのコンビニにデンちゃん。
「ショコちゃん?」
「ああ、ええっと。んー…、どうだっけな。まあまあ、忙しかったような気がする」
小さく笑うデンちゃんに少し胸が締め付けられる。こんなふうに外でデンちゃんと落ち合う、というか待ち合わせみたいなことする自体が新鮮だからなのかもしれない。
デンちゃんのちょっとした仕草でも、ソワソワ落ち着かない気分になってしまう。
「お疲れ」
「うん」
「じゃがりこはあった」
今朝連続でくしゃみしていたのは風邪の兆しだったのか、そう言って鼻を吸ったデンちゃんは少し鼻声だ。
「まさかデンちゃん、そんな寒そうな格好で出てきたの?」
見るからに薄着に見えるデンちゃんは、大丈夫と言いながらご機嫌にコンビニの袋を私に翳して見せる。
「ほかにチョコと、チーズと、それとこれ」
「ハリボ?」
ハード系グミなんて、お酒のおつまみにかなり向かないと思うけれど。
「なんか知んないけど、これ新作かな。ショコちゃん知ってたこれ?」
頭を寄せ合い、袋の中を覗き込んだ。
「はじめて見た。ていうかその色、何?」
「アーミーだって」
「——食べれるの?」
緑で粘土みたいに濁った色したグミ。見ているだけで吐きそうな、かなりグロテスクな色をしていた。
「なんか腹へったから、いま食おうと思って。ショコちゃんにも少しだけなら恵んであげてもいいけど」
「——遠慮しとく」
「グリーンアップル味だって」
「いらないよ」
見るからにジャンキー過ぎて、ほんと気持ち悪い。
だけどあの電話が瑠美じゃなくて、こうやってデンちゃんもいるし胸を撫で下ろす。とはいえ楽しいときほど、ほんの少し心が曇る。
あんなことがあったし、きっとデンちゃんも気が気じゃないと思えるからだ。だから入院とか、ほんとヤメてほしい。
よくわからない感情だけれど、瑠美と赤ちゃんの健康を心から願ってしまう。