ガラクタ♂♀狂想曲
「——寝ました?」
ピアノを弾いていた手を止め、伸びをしながらそういったオーナー。私が少し身体をズラせてみると、そのままソファーへごろんと身を預けてしまったデンちゃん。
「寝てますね」
しかも爆睡ちっくなほどに。
「仕方ないやつですね」
そう言ったオーナーの声が少し遠ざかったので、顔を上げれてみれば姿が見えなくなっていた。私の隣でンンっと短く唸るデンちゃん。
「デンちゃん、起きて」
身体を少し揺さぶっていると、パタパタとスリッパの音が近づいて来る。顔を上げれば、手にタオルケットを持つオーナー。デンちゃんの上にふわりとそれを掛けた。
「そのうち起きるでしょ」
「——起きますかね?」
「起きるまで、寝かせておきましょ」
「…すみません。なんか」
私が謝るのはちょっとヘンかも。
オーナーはなにも応えず、くるりと身を返してテーブルへ向かう。そしてグラスへ新しいお酒を注ぎこみながら、デンちゃんの携帯へ目を落とした。
「やっぱり起こしましょうか?」
「寝かせておきましょう」
テーブルの上でふたたびブルブルと震えている携帯を眺めながらグラスを傾けていくオーナーは、壁に掛かっている時計へ視線を移してから短く息を吐き出した。
瑠美からの着信かな。
「——津川さん。こっちに来て、少し飲みませんか」
隣で寝ているデンちゃんに目をやれば、気持ちよさそうに呑気な寝息。思わず息を吐き出した。
「まだビールでいいですか?」
「はい」
デンちゃんをソファーに残したまま腰を上げ、オーナーが待つテーブルへ向かうことに。そしていまだにそこでブルブルと震えている携帯を覗き込んでみた。
「問題児ばかりですね」
デンちゃんの携帯を指で突き、それをクルクルと回してみせるオーナー。