ガラクタ♂♀狂想曲
「思いませんか?」
同意を求めるかのように少し首を傾げた。
「——はあ。だけど起こさなくても大丈夫ですかね? またなにかあったのでは?」
「いや、寝かせておきましょう。それに何かあったら、俺のほうにも連絡が入るはずですから」
「そうなんですか?」
「ええ」
ふうん。
そしてオーナーは自分の携帯を開けて履歴をチェックし、それをテーブルの上に置いた。
「——だけど、もういっそ、流れてしまえばいいのに」
え。
言葉を飲み込んでしまう。
「思いませんか?」
返事に困ってしまった。
「冗談ですよ」
「——あは」
だけどいまのは冗談に聞こえなかった。やりづらい。
「しかし男女の関係は、いろいろ私情も絡んでくるから厄介です。ほんと女は疲れますね」
「——私も女ですけれど」
「俺たちはライバルでしょ?」
クスリと笑ったオーナーは、手持ちのグラスを傾けた。なんだか脱力。溜息まで出てしまう。無意識にデンちゃんのほうへ目をやっていた。
するとライターの音が聞こえ、チリリとフィルターの焼ける音がする。
「煙たいです?」
「いえ、大丈夫です」
この部屋は内装やインテリアも、なんだか馴染みのないというか、私がそう感じるだけかもしれないけれど、見たこともないようなものばかり。煙草の匂いが、唯一の生活感といったところかも。
ゆらゆらと立ち上る煙を眺めながら、仕事前に見かけた女性とオーナーの2ショットを思い出す。