ガラクタ♂♀狂想曲
うつけモノ







顔には出ていないけれど酔っているのだろうか。素面じゃ言えない、こんなバカげた台詞。


「——あの。酔ってます?」

「いえ?」


しれっとした顔でそう言ったオーナーは、デンちゃんのほうへ顔を向けた。つられた私もそちらへ顔を向けてみたけれど、相変わらず寝ているデンちゃん。


「酔っていないなら、なおさら意味がわからないです」

「いい案でしょ。それは俺だけじゃなく、隼人のためにも」


そして新たな煙草へ火をつけたオーナー。


「もちろん、津川さんにも」


ふわっと息を吐き出す。


「俺だってそれ相当の努力はしますし、だけどこれはもちろん、あいつの承諾を得てからの運びとなります。それに何か行動を起こさなければ、何も変わらないんですよ実際。このまま、時間にただ身を委ねますか?」

「だけど利点なんて思い浮かびません」

「それではこのままダラダラ行って勝算がありますか? 結果は早くわかるほうがいい。時間の無駄だとは思いませんか?」


何も答えられない。
その日がよければそれでいい。だけど、それでは駄目だと思ってはいる。

デンちゃんとのつき合いも、これから先いつまで続くのかとか。

幸せビジョンはエッチを封印したところで、まだなにも頭に思い浮かばない。だけど誰にだってそんな保障などないのだろうと思えた。

それに結局は、なるようにしかならない気もする。だからいまを大事にしつつ、その中でやれるだけやりたい。

後ろを振り返り歩いていくのではなく、毎日いろいろ試行錯誤しながら新しい日を迎えたい。

私だってそのときそのとき、自分が一番いいと思える道を選んでいきたいとは思うけれど——。

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