ガラクタ♂♀狂想曲

「あの」


ええっと。
口を開いたはいいけれど、どう反応すれば。


「———コーキさん」


するとデンちゃんの声。


「ほら起きろ」

「——起きてます」

「寝てるだろ」

「んー…、起きました」


ドキドキと胸が騒がしい。2人の顔の距離が、あまりにも近すぎる。だけどデンちゃんも、もっと驚いたらいいのに。


「何回か瑠美ちゃんから、電話あったぞ」


あ。


「マジッすか」

「ついさっきも鳴ってた」

「なんで起こしてくれなかったんですか」

「だからいま、起こしてるだろ」


ようやくすっかり目覚めたご様子のデンちゃん。そしてオーナーがちらりと私を見る。


「あ、ショコちゃん」


その視線を追ったのか、デンちゃんも次いでこちらへ顔を向けそう言った。


「おはよ」

「おはよー」


ついでのショコちゃん。
なんとなくそんな言葉が頭を掠め、胸がチリチリする。


「ねえデンちゃん。もう遅いし、早く帰ろう」

「あー…」


デンちゃんは曖昧な音で返事を濁し、テーブルに置いてある自分の携帯へ視線を移してしまった。

私はグラスを手に取り、アルコール度数の高いそれを胃に沈めるかのように飲み干す。喉が焼けるように熱くなった。


「オーナー」

「はい」

「さっきのお話ですが、あれをすれば私の勝率はあがりますか?」

「先程お話した通り、それは、俺にもわかりません」

「だけどオーナーは、それでいいんですか?」

「まあ、そうですね。津川さんと同じで、この状況よりは幾分気も晴れます」


いまより。

< 231 / 333 >

この作品をシェア

pagetop