ガラクタ♂♀狂想曲
「あの」
ええっと。
口を開いたはいいけれど、どう反応すれば。
「———コーキさん」
するとデンちゃんの声。
「ほら起きろ」
「——起きてます」
「寝てるだろ」
「んー…、起きました」
ドキドキと胸が騒がしい。2人の顔の距離が、あまりにも近すぎる。だけどデンちゃんも、もっと驚いたらいいのに。
「何回か瑠美ちゃんから、電話あったぞ」
あ。
「マジッすか」
「ついさっきも鳴ってた」
「なんで起こしてくれなかったんですか」
「だからいま、起こしてるだろ」
ようやくすっかり目覚めたご様子のデンちゃん。そしてオーナーがちらりと私を見る。
「あ、ショコちゃん」
その視線を追ったのか、デンちゃんも次いでこちらへ顔を向けそう言った。
「おはよ」
「おはよー」
ついでのショコちゃん。
なんとなくそんな言葉が頭を掠め、胸がチリチリする。
「ねえデンちゃん。もう遅いし、早く帰ろう」
「あー…」
デンちゃんは曖昧な音で返事を濁し、テーブルに置いてある自分の携帯へ視線を移してしまった。
私はグラスを手に取り、アルコール度数の高いそれを胃に沈めるかのように飲み干す。喉が焼けるように熱くなった。
「オーナー」
「はい」
「さっきのお話ですが、あれをすれば私の勝率はあがりますか?」
「先程お話した通り、それは、俺にもわかりません」
「だけどオーナーは、それでいいんですか?」
「まあ、そうですね。津川さんと同じで、この状況よりは幾分気も晴れます」
いまより。