ガラクタ♂♀狂想曲

飲みはじめるとキツイお酒でも体に馴染んでしまうように、私の感覚も鈍っているのだろうか。

考えれば考えるほど、よくわからなくなってくる。


「———私だって、その場の状況に合わせていろいろ考えています」

「それは失礼いたしました」

「これからは、あまりわかったふうなこと言わないでください」

「わかりました。いろいろ口が過ぎたようですね。時間からみれば、そろそろ電話が鳴るでしょう。あいつは本当に顔を出すつもりなだけです」

「もういいです」

「雛が最初に目にしたものに懐いているのと同じです。津川さんの後押しがあるからこそ、あいつは瑠美の元へ行くのです」

「私の、」


後押し?


「以前のあいつは後ろめたい気持ちでしたから。いまのように瑠美を匿ったりするのは、何かの兆しだと俺は思っています。この輪から這いずり出させ、あいつを変わらせたのは津川さんです」


私がデンちゃんを変えたわけではない。そうなる要素がデンちゃんにあっただけだ。


「あいつを見てきた俺が言ってるのだから、これは間違いありません」


何も言えず黙り込んでしまった。


「しかし瑠美が妊娠したとあっては事情も違ってきます。なので俺としても少々焦り気味に、手荒な真似をしてしまっているだけです」


私はいまのデンちゃんしか知らない。こうして考えていると、デンちゃんのことが好きかどうかも、なんだかわからなくなってくる。


「———ファミレスで会ったときまで、デンちゃんの家に瑠美がいることを知りませんでした。それはなぜです?」

「それは津川さんのことを思ってのことでしょう? 津川さんを手放したくないから言わなかっただけです。そうでなければ隠す必要などありませんから」


それは、私もそう思った。けれど連れ出せばいいといったのは私だ。それなのに黙っていたデンちゃんと、ここに私を置いて去ってしまったデンちゃんが上手く繋がらない。

黙り込んでしまう。オーナーを論破できる気もしない。

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