ガラクタ♂♀狂想曲
「しかしそんなこともわからないだなんて、津川さんはもう少し頭の良い方と思ってましたが、俺の買い被りすぎだったのでしょうか」
「……なんだかオーナーは、デンちゃんの肩ばかり持つのですね」
「それは当然です」
すると私の携帯が、本当に鳴りはじめた。表示された名前はデンちゃん。時計に目をやれば出て行ってから1時間弱。
表示されている名前を見て、固まってしまう。頭が痛い。
「なんなら抱きましょうか? 女性を抱けないわけではないですよ」
「何をいって——」
「津川さんをここに置いて出て行ったのは隼人なのですし、最も手っ取り早く使える手ですよね」
「——なんだか凄いですね」
デンちゃんのためなら、私を抱くことも容易いことなのだろうか。
携帯は留守電へ繋がってしまったらしく震えが止また。オーナーが小さく息を吐き出す。
私も息を吐き出し、改めて携帯を開けた。
『ショコちゃんっっ』
コール一回で電話口に出たデンちゃんは、そう言って激しく咳き込む。
「こんな時間に電話なんて、どうしたの?」
『いまどこ? もう家? 俺、途中で落ち合うつもりでS駅なんだけど、いまの電車にショコちゃん乗ってなかった。さっき電話もしたんだけど』
この時間は30分に1本程度しか電車は走っていない。
「ごめん、さっきの電話。わざと出なかったの」
『え?』
「いまからオーナーのところ出るね」
『ショコちゃん?』
「寒いでしょ? デンちゃん風邪気味なのに。次の電車に乗れるかわからないけど、私が乗ってなくても先に帰ってて。じゃあ、切るね」
オーナーに目をやれば、スッと目を細め煙を吐き出した。