ガラクタ♂♀狂想曲
一階のロビーには水が流れている空間があった。それだけではなく、外には大きな庭まである。息が詰まりそうだ。
そして外に出れば、のぼせてしまった体と顔に朝の風が冷たく刺さった。
「——さむっ」
まだ暗かったので念のため携帯を握り締めながら急ぎ足。少し歩けば思いのほかすぐ大通りに出た。駅も少し向こうに見える。
すると背後でクラクションが短く3回鳴った。嫌な予感。
「すいませーん」
車がスピードを緩めながら近づいてくる。そして窓からまるで品定めでもするかのようにじろじろ眺められた。
「こんな時間にどうしたの?」
声を掛けてきたのは下品な顔の男。車のことは全然詳しくない私だけれど、こんな車に好んで乗ってるというだけで神経疑う。
「無視しないでよー」
すぐ目の前にコンビニが見えた。
持っていた携帯のロックを外し、デンちゃんの番号を表示させたところでバタンとドアが閉まる音が聞こえる。
「ひとり?」
なに。
「駅に向かってるの? だけど電車まだでしょー。家まで送ってあげる」
一旦避難しようと思い、無視しつつコンビニに向かった。そして発信を押そうとしたとき――、携帯を奪われてしまう。
「ちょっと!」
「無視しないでよー。ほらお姉さん。ね?」
「返してください」
「送ってあげるってー」
「いらないです」
車の中に目をやれば運転手と目が合った。目の前のいけ好かない男と同じ系統で、救いようがない容姿だ。
「早く返して」
ほかに誰も降りて来ないところをみると、あわせて2人。逃げ切れるかな。
「寒いでしょ〜? だってほら手もなんか冷たいし」
ここまで言っても折れない。
そのうえ私の腕を掴み、手を絡めてきた男。ぞくっと寒気がした。
「——は、放してよッ」
「なに怒ってんの? 送ってあげるってば」
「ちょ、やめ、きゃあ」
背後から突然肩を抱かれ、私の体があらぬほうへ傾き誰かとぶつかる。振り返り見えたその姿に尋常じゃないほど瞬きを繰り返した。