ガラクタ♂♀狂想曲

「コーキさんにいってたじゃん。男でよかったって。俺、今日は男として最低かもって思った。なんかヘコむし、反省したし、寒いし。——それに折り返しないし、しかもあれ、ショコちゃん気づいてわざと切ってたし」

「なんか、ずるいよ」


こんな体勢で、そんな声で、この温もりで。何もいえなくなってしまう。


「ごめん」


デンちゃんはそう言って、私の身体に巻きつけていた腕の力を緩めてしまう。


「———あれは、ってか電話のことは、私のほうこそゴメン。それにあれは…、あれは——…、デンちゃんが謝ることじゃないじゃん?」


繋がってることを知っていたくせに、何も言わずに切ってしまったのは私のほうなんだし。


「ショコちゃんがコーキさんであろうと、多分ほかの誰であろうと、俺以外の奴と楽しそうに話すの聞きたくないって思った。耳に入るのもイヤだと思ったのに。どうして俺、ショコちゃんをあそこに残していくかな」

「……デンちゃん」

「ねえショコちゃん」

「うん」

「コーキさんと寝た?」


いまさら、こんなことを思いつくデンちゃん。

そもそもの原因が、あの場に私を残して行ってしまったデンちゃんだ。送り出したのは私だけれど、あのとき両天秤に掛けられているどころか、同じ土俵にも上がっていない気がしたのに。


「——寝たの?」

「デンちゃん」

「あ、聞きたくない」

「ねえデンちゃん。意地悪なこと、言ってもいい?」

「イヤ」


なんだか力が抜けてしまう。


「わかった。じゃあ言わない」


そのまましばらく黙り込んでしまったデンちゃん。

視線を移した窓の外に見える世界が、だんだん白みを帯びてきた。そして私はデンちゃんの腕の中で、さっきオーナーの出した提案の意味を、ぼんやりする頭で少し考えてみる。

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