ガラクタ♂♀狂想曲
しかも、どうしてそんな時間にパンケーキなんか焼こうとするわけ。意味が分からない。妊婦になれば理解できるのだろうか。
送り出したのは、この私なのだけれど。
「それで、そのまま家を出てきたの?」
「ココアは飲んだ…」
「あっそ」
ズルズル鼻声デンちゃん。
「人の気も知らないで」
「瑠美の様子見に行って、すぐ帰るつもりだった。何もなければまたショコちゃんと一緒にいれるって思ったから」
「なにそれ」
「本当にそれだけしか頭になかった。だけどココア飲んで体が温まってホッとしたら、いまショコちゃんがコーキさんと2人きりだと思い出して本気で反省した」
「そんなのどうせ、いま思いついたんでしょ」
またいつもみたいに。
「違うし」
「——だけどデンちゃん、なんか今日はいつもより長く喋りすぎで、ちょっとヘン」
デンちゃんの言葉が全部あとづけの言い訳に聞こえてしまった私は、オーナーが言ったようにやっぱりいじけてるのかな。
「だけど本当。だからこうやって謝ってるし、それをわかってもらいたい。———どうすれば、あのときショコちゃんがコーキさんに言った言葉を俺に言ってくれる? あんな言葉は俺だけに言ってほしかった」
そしてそのまま、黙ってしまったデンちゃん。
「デンちゃん」
「————ごめ、なんか頭クラクラする」
身体をずらせデンちゃんを見れば、私の顔へ目の焦点を合わせるのに反応が鈍い。薄い水の膜が張ってしまったように潤んだ瞳。お風呂に浸かっているのに、乾いたように見える唇。