ガラクタ♂♀狂想曲

「ほら拭いて」

「……泣かないで」

「私のことはいいから早く拭いて!!それで服着て、熱計って、それから…、もう!デンちゃん早くして!!」


またアンパンマンみたいに力が抜けてしまったデンちゃん。


「人様に迷惑をかけるな」

「なに言ってるのよ、もう!」

「親父の言葉。なんかちょっと笑えるだろ」

「……わかったから。ほら早く服着よう。ね?」


鈍感なのか敏感なのか、計算なのかそうじゃないのか、脆いのか頑丈なのか、繊細なのか図太いのか。


「——ショコちゃん、」

「早くして!」


なんだかどうしようもなく泣けた私は、怒っているのか悲しいのか。だけども冷静な判断を強いられ、自分でもよくわからない感情のまま堰を切ったようにどんどん溢れる。

まるで気でもふれてしまったかのように、ただ涙を流した。


「泣かないで」

「勝手に緩んだの。デンちゃんの鼻の栓と一緒!」


そしてようやくベッドへデンちゃんを寝かしつけ、体温計を脇に挟ませる。


「寒くない?」

「大丈夫」


おでこへ手をやれば、やっぱり熱い。いつもより呼吸の浅いデンちゃん。

だけど私も肩で息をしていた。呼吸を整えるために深呼吸を繰り返すうちに涙も止まる。

私を見上げていたデンちゃんの手が、視界の中に伸びてきた。そして少し目を細め、私の頬を撫でる。


「——もう涙止まった?」

「うん」


今日はいろいろあり過ぎて、かなり頭の中がグチャグチャするけれど——、するとピピっと短い電子音。

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