ガラクタ♂♀狂想曲
近づいたと思ったら身を引くように遠ざかってしまい、遠ざかったと思えば求められる。だけどこれって私と一緒なのかもしれない。あのとき確かに守られるだけでなく守ってあげたい、一緒に一歩ずつ進みたいと思ったのにも関わらず、できる自信がないと簡単に思ってしまう。
もしデンちゃんが私と同じ思いを抱えているのなら、どうしてオーナーがあんな提案を言い出したかってのも理解できる気がした。
私の期待にも、応えようとしてくれているように見えるデンちゃん。いまは私のことまで責任が取れない。ハッキリできない。でも一緒にいたい。だけど突き詰めるのが怖い。どこかで、そう思っているのでは。私と同じ気持ちだと思いたい。
だから私を繋ぎとめておくために指輪の話へ繋がったと思えば、デンちゃんがやった一連の行動も理解できる——。
「お腹減ったでしょ? いまから、おかゆ作るね」
「——ショコちゃん」
「ん?」
「ああー…うん、お腹減った」
「待ってて。すぐ出来るから」
だからと言って、どうすれば。
このまま曖昧にモヤモヤした関係は、時間が経てばいつか解決するのだろうか。だけど時間が経てば、瑠美のお腹も大きくなる。
「あ、そうだデンちゃん。たくさん汗かいたんじゃない? 先に着替えたほうがいいかも。ほら、起きられる?」
一旦腰を上げキッチンへ足を向けたものの、ふたたびベッドサイドへ歩み寄った。するとデンちゃんは私を見つめ、すっと両手を伸ばしてきた。
「ショコちゃん切れ」
またチカラが抜けてしまったデンちゃん。
「——ほら、もう。アンパンマンしっかり…、って重いし」
その腕を私の首へ絡め、なんとかデンちゃんを抱き起こす。
「…あは、さすが。ショコちゃんすごい、力持ち」
「アンパンマンは力が抜けすぎなんでしょ。ほらバンザイして。ばんざーい」
「ばんざーイ」
「よしよし」
そしてデンちゃんの裾を持ち、着ていた上着を一気に頭から抜く。