ガラクタ♂♀狂想曲

「次は、こっちね。とりあえず、中のシャツだけ先に着替えよ」


頭から新しいシャツを被せた。


「——ところでショコちゃん」

「んー?」

「アンパンマンが、なに」

「んーっと——…、なにがキミのしーあわせ? だっけ? あってる? はい。上にこれ着てください」

「なに?」

「この歌、知らない?」

「知ってるけど、なんでいま」

「んー、なんとなく?」

「ヘンなの」


デンちゃんにとって、なにが幸せなのだろう。なにをしているときが楽しいのかな。


「これでオッケーっと。あとそれと、熱も計ってみたほうがいい。はいこれ体温計」

「——ショコちゃん」

「ほら。ちゃんと自分で挟んで」

「はあい」


それからキッチンに立った。デンちゃんの視線を背中に受けながら口を開く。


「——あのさデンちゃん。小さいころって、なにか習ってた? ほらピアノは習ったことがないって言ってたけど、ほかに…、たとえばスイミングとか体操とか」

「習いごと?」

「うん、そう。喧嘩強いし、なにか格闘技とか? だけど格闘技って、なにがあるっけ。空手も格闘技に入る?」

「入るけど習ってない」

「じゃあ、なに習ってたの?」

「とくに。それに強くないよ。強い人って好きじゃないし」

「そっか」


ねえデンちゃん。
もしこの私たちの関係が、さっき感じたように私の自惚れじゃないのなら——、いま糸口を見つけた気がする。

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