ガラクタ♂♀狂想曲
「永遠なんて、この世にないって知ってる」
すると突然デンちゃんが口を開いた。呆気にとられてしまった私は、デンちゃんを見つめてそのまま黙り込んでしまう。
「酔っ払ってグデグデのショコちゃんが、はじめて俺を呼び出したとき、そう言った。覚えてないだろうけど」
「…うそ」
「ほんと。そんなの私、ずっと知ってる。だけどそれでもやっぱり信じてた。馬鹿だ私———」
それからデンちゃんは、私の頬を撫でた。
「興味があった」
「どうして泣くの」
「——見ず知らずのショコちゃんに、すごく。ただすごく興味があった」
「デンちゃん」
静かな空気を割るように空間がビリビリと振動し、携帯が鳴りはじめた。存在をアピールするのは、私の携帯。
2人して黙り込んだけれど、デンちゃんがすっと手を伸ばし、それを私の手に握らせる。見れば店からだ。
思わず時計を確認。
私が入るはずの時間は過ぎている。けれど休むと連絡を入れたはずだ。
携帯へ落としていた顔を上げれば視界からすっと消えたデンちゃん。ソファーへ腰を下ろし、かちりと煙草へ火をつけた。
それを目で追いながら携帯を耳に当てる。
「———もしもし」
『もしもし、俺です』
オーナーだ。
「あの、すみません。今日はちょっとお休みさせていただいたのです。ほんと、」
『大変なんだ』
「え」
『こんなときにあいつ携帯切れてるし。隼人そこにいる? 一緒?』
「どういう、」
『いるなら代わって』
なに。
『ごめん津川さん。とにかく代わって』
なんだろう。
デンちゃんに視線を移せば、黙って私を見てた。
「…デンちゃん、電話。オーナーから」
ぴくりと眉が動いたデンちゃんは、煙草を灰皿へ押し付け立ち上がる。
「俺? なんで」
「携帯切ってるの?」
「あー…、うん」
私の手から携帯を受け取ったデンちゃんは、ここでも少し不思議そうな顔をした。
「急用みたい」
するとデンちゃんは眉をひそめたまま、黙って携帯を耳に当てた。