ガラクタ♂♀狂想曲
「代わりました」
息を潜めてしまう。デンちゃんの表情だけでは電話の内容まで読み取れない。だけど眉根を寄せた。
「——そうですか。わかりました」
それからいくつか言葉を交わしたデンちゃんは自分の携帯を取り出して電源を入れ、忙しなく操作しはじめた。
「デンちゃん」
「ちょっと待ってて」
怖い。ひょっとすると瑠美の身に、なにかあったのではないだろうか。
「もしもし隼人です。ええ、すみません。いま、お話しできますか?」
デンちゃんが黙れば空気も止まる。
「とにかく、I病院に来てください。俺の弟か妹になるはずの子です」
低い声でそう言って、私の手を掴んだ。
「それぐらいわかっています!!場所はインターから降りてそのまま国道を走れば交差点に出ますから、そこを右に折れ道なりに行った場所。はじめてでも分かりやすいところです」
電話は切れてしまったようだ。
ディスプレイを睨みつけるデンちゃん。しばらくの沈黙に胸が締め付けられる。
「くっそ」
携帯を投げつけた。それから頭を抱え、イラついたような息を吐き出す。
「デンちゃん——その病院、一緒に行こうよ。ここにいても仕方ないでしょ」
「ほんと、なにもかもが最悪だ。どうしようもない」
「デンちゃん」
「最悪すぎる」
「デンちゃん!」
「……」
「——ほら立ってよ」
まだ熱っぽいデンちゃんを無理矢理に引きずり立たせた。