ガラクタ♂♀狂想曲
宝モノ
「それぞれがいくら頑張ったとしても、どうにもならないことも沢山ありますね」
「——これもそれだと」
喉がカラカラして上手く言葉が出てくれなかった。デンちゃんが出て行った扉へ目をやる。
「そう思わないと実際やっていけないことも多いでしょう? きっと、それぞれに与えられるべきものは、最初から決まっているのです」
まるでこれらすべて決まった出来事のようにオーナーはそう言い、それから丸椅子を私の前へ置く。好意に差し出された椅子へは腰を下ろさずに、少し頭を下げた。
「だけどその言い方ですと、まるで私たちは誰かの手の中にあるコマみたいです」
「ああ、なるほど。つまり気に入ったコマほど乱雑に扱われてしまうわけですね。それではその誰かさんとやらは、きっと幼い子どもなのでしょう」
小さくふっと笑い、傍らに横たわっている瑠美の額へ貼りついた髪の毛を丁寧に払いのけてやる。すると瑠美の目の端から一筋の涙が零れ落ちた。
「……」
起きているのだろうか。オーナーも瑠美の涙に気づいているはずなのに拭ってやろうとはせず。
「幼い子どもが采配したとあれば、なにもかもが納得できますね。仕方がないと諦めもつくのではないでしょうか。——ですがその与えられた環境の中で、どう選択していくかの自由はコマにもあると思います」
私に対して言っているのか、それとも瑠美に対してなのか。
「思うに、可愛がりすぎてグチャグチャにするのも、興味があって羽を引きちぎるのも、意図あってのことでなければ次の日に忘れてしまうのが幼い子どもです」
「くよくよしたところで仕方ないということですか?」
「それに気づけた今日、なんだか勝った気分になってしまいませんか?」
「私にはよくわかりません」
「こちらが上手くやれば子どもなんて簡単に騙せるはずです。きっと」
人はよく乗り越えられない壁はないという。この世には神様が存在して、そしてそれぞれに見合った試練として壁を与えられているのだと。
いま聞いた、それとは違うオーナーの話は耳にも新鮮。そう考えれば相当なクソガキかも。