ガラクタ♂♀狂想曲
「とんだクソガキですね」
「ですが子どもはもともと傲慢で残虐なのです。成長していく上で、そのやり方では間違っていると。大切にするというのはどういうことなのかという意味に気づくのです、おそらく。そう思えば以前言ったように、やはり俺もまだまだ生意気なクソガキですね。それにあいつも…、こいつも——、」
そして息を吐き出したオーナーは、細かく震えはじめた瑠美の肩をポンポンと叩く。
「それなら人はいつ、大人になれるのでしょうか?」
「———こういったことに気づいたこと自体、こういう考えを理解できるようになったことが、大人に一歩近づいた証拠であると、そう思いたいですね」
空気が微かに震えてる。
人がいるのに、そんなふうにひっそり泣かないでほしい。寝たふりなどしないで鬱陶しい。
だけどこんなふうな瑠美を見ていると、大人になるということは、ただ分かったフリをして感情を押さえつける術を学んでしまうことなのかもしれない、とも思えた。
そしてこの静寂を割り、コンコンとドアを控えめに叩く音。すっとドアが開く。
「桐生さん。この度は大変ご迷惑をおかけいたしました」
「いえいえ、そんな。どうか水田さん、お顔をお上げください」
「——ですが」
瑠美のお腹に宿っていた子の、お父さんになるはずだった人。デンちゃんのお父さん。
「わたしは水田さんに頭を下げていただくようなことは何もしておりません。どうか」
するとゆっくり顔を上げたデンちゃんのお父さんは、そのまま私のほうへ視線を動かせ、そして頭を下げてくる。
この人がデンちゃんの。
「あの、すみません。いま隼人くんはどちらに?」
「隼人なら外のソファーに座っています。この度は本当に、ご迷惑をおかけしました」
ご迷惑……。ここに向かうときデンちゃんが電話したのは、この人のところだ。あれから本格的に力が抜けてしまったデンちゃん。風邪で体も弱っているのに。
「ふざけないでください」
「津川さん」
少し焦った声色にも聞こえたオーナーの声を、振り切って続ける。