ガラクタ♂♀狂想曲
「あなた一体、なに言ってるんですか?」
なにもわかっていない子どもだって、あとから笑われるかもしれない。だけど言わずにいられない。
「あなたのせいで、あんたのせいで——。そんなふうに謝って済むのなら警察なんて要らない!」
「津川さん!」
止まらない。私にとってデンちゃんが落ち込んでしまうことのほうが重要。
「どこの誰かも知らない私なんかにまで偉そうに頭下げて何様ですか?」
「津川さん!!」
「オーナー!私は間違っていますか!? だけど止めるのは無理です!」
そしてデンちゃんのお父さんを睨みつける。
「不躾な娘で、大変失礼いたしました!」
嫌味を込めそう言って頭を下げたあと、そのまま病室を出た。目指すはデンちゃん。
すると病室を出てすぐそこのソファーに、生気が抜けてしまったようにも見えるデンちゃんがいた。
「——デンちゃん」
涙が出そう。
熱もまだ下がりきっていないのに、こんなことで無理させてしまった。気が進まなかったデンちゃんを、ここへ連れて来たのは他でもない私だ。
「ショコちゃん? 何で泣い、」
「ごめんデンちゃん。早く帰ろう」
「ショコちゃん?」
私はデンちゃんが腕枕を好むのを知っている。ひとりで眠るとき、小さく丸くなって眠るのも知っている。
瑠美が好きだといったデンちゃんや、ひっそり涙していた夜も、口を開けると傷口が開くと言った日も。
それにいまはピアノを弾くのが怖いことや、オトモダチになってくださいと言ったデンちゃんも。
いまのデンちゃんを知っているのは、きっと私。
「私、なんか泣きそう」
「———もう泣いてるけど」
そう言ったデンちゃんは慌しく飛び出してきた私とは違い、ソファーに根が生えてしまったんじゃないかって思うほど、ぴくりとも動かない。