ガラクタ♂♀狂想曲
そんなデンちゃんの足のあいだへ、身体をねじ込むようにして座り込んだ。
すると私の頬を両手で包み込み、そのままじっと見つめてくるデンちゃん。
「泣かないでショコちゃん」
放心しているようにも見えるデンちゃんは能面のような無表情でそう言い、だけど私の頬を撫でるように涙を拭ってくれた。
「悲しいこと、あった?」
「違う」
「————じゃあ、」
ふたたび私の頬を撫でた。
「いま私ね、デンちゃんのお父さんに暴言吐いた」
「ショコちゃんが?」
「うん」
「ちょっと聞いてみたかったな」
無表情だったデンちゃんが、そう言って力なく笑う。
「親父と俺、似てただろ」
いままで何の根拠もなく、デンちゃんは母親譲りの顔なんだと思っていた私だけれど、年を取ったらあんなふうになるんだろうなって思えた。私の頬を撫でるデンちゃん手が、少し震えている。
「…デンちゃん」
「ん」
「よしよし」
以前やってあげたように頭へ手を伸ばす。それを拒まず、私の肩にすとんと頭を乗せたデンちゃん。けれど全体重が圧し掛かっているのではないかと思えるほどだ。その重みによろけてしまいそうになり足を踏ん張った。
「あいつが言うんだ。ぬくもりや優しい口づけは負担だった。ただ自分を開放してほしかっただけなのにって」
「——どういうこと?」
なんのことを言っているのか。だけどデンちゃんは息を吐き出して黙り込んでしまう。落ち着くために私も一度息を吐き出した。
「デンちゃん」
このまま何も言わないつもりなのか、それとも続けるつもりなのか。
カタンと廊下に響く音にそちらへ目をやれば、オーナーが病室から出て来た。
するとデンちゃんがふたたび口を開く。