ガラクタ♂♀狂想曲
「子どもを捨て、あの町を出て、すべてから逃げ出したかったのは、お前の母親ではなく自分のほう」
「……え?」
「瑠美は、そんな自分を分かってくれている。だけど子どもはいらない。中途半端で馬鹿なところが自分にソックリでイヤになるんだって。俺みたいなのが、また生まれると思うと虫唾まで走ったらしいよ」
な。そんなことを、面と向かって?
デンちゃんの言葉全ては理解することが出来なかった私だけれど、それでもとにかく眩暈がした。
かと言ってかけてあげられる言葉は何も見つからず、オーナーへ視線を投げた私。
するとズルっと身体の力が一気に抜けたデンちゃんの頭が、私の肩からずり落ちてしまう。
「——ちょ、や、デンちゃん」
必死でその身体を受け止め、抱きかかえる。
「デンちゃん!」
「気を失ってるか、寝てるか…、」
「お、オーナー…」
ふっと重みがなくなったと思えば、オーナーがデンちゃんの身体を支えていた。
「隼人」
ペチペチと頬を叩くオーナー。
「———どういうことですか。なんか頭が混乱して。さっきデンちゃんが言ったことは、本当なんですか…」
「ここはひとまず、隼人を連れて帰りましょうか」
そしてダランと力なく伸びきったデンちゃんの腕を取り、そのまま背負った。
「行きましょう」
「ま、待って」
私はその場で足踏みをするかのように、デンちゃんを背負ったオーナーの後姿と病室を交互に視線を移す。
「オーナー!」
デンちゃんこんなふうになってるのに、このまま引き下がれない。
するとくるりと振り返ったオーナー。その肩で項垂れているデンちゃんの頭が、大きく揺れた。