ガラクタ♂♀狂想曲
ツワモノ
頭をもたげ、窓の外をぼんやり眺めているデンちゃん。
何を考えているのだろう。
ピアノのことかな。それともオーナーの言葉。
「…寒くない?」
「うん」
指は絡めたままだ。少し汗ばんだデンちゃんの手。
お父さんのこと、瑠美のこと、お母さんのこと、たくさんあるから私のことは最後でいい。いますぐそれをデンちゃんに伝えないと、このまま本当に消えてしまうのではないかと思ってしまう。
ふとバックミラーの中にデンちゃんの様子を伺うオーナーの姿が目に入る。私の視線に気付いたオーナーは、なぜか少し眉間を広げてみせた。
気のせいなのかもしれないけれど、それは少しおどけた表情にも見える。
「——隼人」
「はい」
「お前ら送り届けたあとピアノ弾こうと思ってるんだけど、もしお前が弾くなら、こんなときなに選ぶ?」
なにも応えないデンちゃん。オーナーのため息が聞こえた。
「おい隼人。いま誰もお前に弾けと言ってないんだからサラッと言えよ面倒くさい。もし弾くならの話だ」
「——いま、考えてるんです」
本当に考えているのか、そう言ったデンちゃんはコツンと窓へ頭をつけた。
沈黙が続く。